当会の主張はすべて認められ、監査委員の誤りを司法は断罪した
令和8年10月20日、千葉地方裁判所は、当会が提起していた給与返還等請求住民訴訟について、原告の請求を認容する判決を言い渡した。
判決は、白子町長に対し、元白子町地域プロジェクトマネージャーである今井惠一氏に、34万3320円及びこれに対する令和7年6月1日から支払済みまで年3%の割合による金員を請求するよう命じた。
この判決を受けて、白子町監査委員は今、何を思うのか。
当会は、令和7年12月19日付の監査結果について、当初から重大な誤りを指摘してきた。
その内容は単純である。本件は、停職処分の効力の問題ではない。
戒告が妥当か、停職が妥当かという懲戒処分の量定の問題でもない。
問題は、勤務時間中に職務と無関係なインターネット閲覧をしていた時間について、給与を受け取っていたことによる不当利得返還請求の問題である。
ところが、白子町監査委員は、この本質を理解できなかった。
監査委員は、千葉県市町村公平委員会が停職処分を戒告処分に修正したことを理由に、あたかも給与返還請求権まで消滅したかのように判断した。
そして、「停職処分が遡及的に否定された結果、無給とする法的根拠が消滅し、給与支給は適法な支給に転化した」などという畢竟独自の見解による不当な判断を示した。
当会は、この監査結果を、法律論として根本的に誤っていると批判していた。
そして今回、千葉地裁は、懲戒処分と不当利得返還請求は別問題であると、当会の主張をそのまま認めた。
停職処分が戒告に修正されても、勤務していなかった時間が消えるわけではないこと。
勤務していなかった時間に対応する給与について、白子町に返還請求権が存在すること。
町長がその返還請求権を行使しないことは、違法に財産の管理を怠る事実に当たること。
これらは、すべて当会が住民監査請求の段階から主張してきたことである。
裁判所は、監査委員の判断ではなく、当会の主張を採用したのである。
第1 監査委員は本件の法的構造を理解していなかった
今回の判決は、監査委員の判断がどこで誤ったのかを明確に示している。
裁判所は、不当利得返還請求権に基づく給与相当額の返還請求は、懲戒処分とは趣旨及び目的を異にするものだと判断した。
これは、当会が繰り返し指摘してきたことである。
停職処分が戒告に修正されたからといって、勤務時間中に私的なインターネット閲覧をしていた事実が消えるわけではない。
労務を提供していなかった時間が消えるわけでもない。
したがって、その時間に対応する給与返還の問題も消えない。
この程度の法的整理は、本来、監査委員が監査の段階で当然に行うべきものであった。
しかし、白子町監査委員は、懲戒処分と不当利得返還請求を混同し、「適法な支給に転化」などという根拠不明の論理で、町の返還請求取りやめを容認した。
その判断が誤りであったことは、今回の判決によって明らかである。
第2 証拠を見ても、返還請求権の存在は明らかだった
判決は、今井氏が少なくとも勤務時間の30%を職務と無関係なインターネット閲覧に費やして勤務していなかったと認定した。
その根拠として、今井氏本人が、令和6年10月頃以降、1日の3分の1程度の時間を私的なインターネット閲覧に費やしていた旨を述べていたこと、本件期間中に職務用パソコンから594件のウェブサイト閲覧が確認されていたこと、そのほとんど全てが地域プロジェクトマネージャーとしての企画立案業務と明らかに関係のないものであったこと、さらに令和7年1月27日には勤務時間の約70%を私的閲覧に費やしていたことを挙げている。
裁判所が認定した「少なくとも30%」とは、訴訟上確実に認定できる下限である。
証拠資料上は、勤務時間の約70%を私的閲覧に費やしていた日があったことも明らかになっている。
これだけの証拠が存在していたにもかかわらず、監査委員は、なぜ不当利得返還請求権の存在を認めなかったのか。
なぜ、町が返還請求を取りやめたことを是正しなかったのか。
なぜ、「適法な支給に転化」などという理解困難な理屈で、請求を棄却したのか。
監査委員は、この判決を受けて、自らの判断が誤っていたことを真摯に検証すべきである。
第3 素人に監査委員を任せてよいのか
今回の件で改めて問われるべきは、白子町の監査委員に、法的判断を伴う住民監査請求を適切に処理する能力があるのかという点である。
住民監査請求では、単に会計書類を確認すれば足りるわけではない。
地方自治法、民法、条例、判例、債権管理、懲戒処分と不当利得返還請求の区別など、法的な理解が不可欠である。
本件では、まさにそれが問われていた。
ところが、監査委員は、停職処分と不当利得返還請求という別個の制度を混同した。
「適法な支給に転化」などという、根拠の乏しい独自の理屈で、町の対応を正当化した。
その結果、住民訴訟において、裁判所から正反対の判断を示されることになった。
これは偶然の判断違いではない。
法的構造を理解できていなかったということである。
法律判断の素人に、町の財務会計行為の適法性を審査する監査委員を任せてよいのか。
今回の判決は、その問題を改めて突き付けている。
第4 監査委員の誤りにより町の損失は拡大した
監査委員が適切に判断していれば、本件は住民訴訟に至る前に是正されていた。
白子町が返還請求権を適切に行使し、勤務していなかった時間に対応する給与の返還を求めていれば、それで済んだ話である。
しかし、監査委員は請求を棄却した。
そのため、当会は住民訴訟を提起せざるを得なかった。
当然、当会には相当な費用や時間がかかっている。
一方、町もまた、訴訟対応のために時間と費用を割いた。
本来であれば、監査の段階で是正できた問題について、監査委員が誤った判断をしたために、住民側にも町側にも余計な負担が生じたのである。
これは極めて皮肉な事態である。
町の損害を防ぐべき監査委員が、誤った監査結果によって、結果として町の損害を拡大させている。
町民の財産を守るべき監査委員が、町の違法な債権不行使を容認し、訴訟対応という追加負担まで生じさせたといえる。
この責任を、監査委員はどう考えているのか。
第5 町長に債権を放置する裁量はない
今回の判決で重要なのは、地方公共団体の債権管理に関する判断である。
裁判所は、地方公共団体が有する債権について、客観的に存在する債権を理由もなく放置することは許されず、原則として、地方公共団体の長にその行使又は不行使についての裁量は認められないとした。
つまり、町の債権は町長個人のものではない。
町民全体の財産である。
町長が「請求しない」と言えば、それで消えるものではない。
客観的に債権が存在するなら、町長はそれを管理し、必要に応じて回収しなければならない。
監査委員は、本来であれば、この判断を監査の段階で示すべきだった。
しかし実際には、町の返還請求取りやめを容認した。
裁判所は、その判断を否定したのである。
終わりに
今回の判決は、白子町の公金管理に対する司法の警告であると同時に、白子町監査委員に対する警告でもある。
当会が町及び監査委員に主張してきたことは、裁判所によりそのまま認められた。
一方で、監査委員の判断は、裁判所によって事実上否定された。
監査委員は、この結果をどう受け止めるのか。
「適法な支給に転化した」という判断を、今でも維持するのか。
停職処分が戒告に修正されたことで、不当利得返還請求権まで消えたと、今でも考えているのか。
自らの誤った監査結果によって、当会にも町にも余計な費用と時間を生じさせ、結果として町の損害を拡大させたことをどう考えているのか。
監査委員制度は、町の説明を追認するための制度ではない。
町の財務会計行為を、独立した立場から、法と証拠に基づいて審査するための制度である。
本件で白子町監査委員は、その役割を果たせなかった。
法律判断を誤り、証拠評価を誤り、町の債権管理義務違反を見逃した。
その結果、住民訴訟で是正されることになった。
このような監査で、町民の財産を守れるのか。
法律判断の素人に監査委員を任せ続けてよいのか。
白子町の監査委員制度が本当に機能しているのかどうかが、いま改めて問われている。