【 経緯 】
既報<101>【住民訴訟】(第 2回 弁論)※2022年 11月 25日(金)の続報です。本日、第 3回 弁論が令和 5年 1月 27日(金)千葉地方裁判所( 第 601号法廷 )10:00開廷により実施されました。
【 第 3回 口頭弁論 】
令和 4年(行ウ)第 32号 損害賠償等請求事件
原告 市民オンブズマンの会白子会長
被告 白子町長 石井 和芳
< 弁 論 要 旨 >
2023 年 01月 27日
千葉地方裁判所民事第 3部合議 4係 御中
原告訴訟代理人 弁護士 及川 智志
1 白子町国民体育館について
教育委員会に管理権限が存するのは体育館の建物についてだけであって、その敷地の管理権限は白子町長に存する。そして、本件自販機が設置されている場所は、教育委員会に管理権限がある体育館建物の中ではなく、白子町長に管理権限がある体育館土地(体育館建物の外の土地)の上である(乙 2の写真 ⑪)。
2 白子町青少年センターについて
(1)許可書が存在しない年度についての違法
本件訴訟の請求は、平成 14年から令和 3年にかけての 20年を対象とするものであるが、この間、許可書が存在するものは 6通である。つまり、それ以外の許可書が存在しない 14年間については、地方自治法 238条の 4 第 7項に規定されている行政財産の使用許可がされていなかったといわざるを得ない。つまり、この 14年については、行政財産の無許可使用が認められる。
この点、被告は、「協定書」に「 1年間延長出来るものとする」との規定があることから、「許可書のない期間も行政財産の使用許可の範囲内の行為となる」と主張しているが、失当である。なぜなら、地方公共団体の会計年度は独立しており(地方自治法 208条・会計年度独立の原則)、行政財産の使用許可は年度ごとにされる必要があるからである。実際、白子町自身、許可書が存在する8年については、年度ごとに行政財産の使用許可をしている。
したがって、上記の許可書が存在しない 14年については、違法な行政財産の使用が認められるので、本件請求が認容されるべきである。
(2)許可書が存在する年度の違法(使用料を徴収していない違法)
上記の許可書が存在する 6年については、電気代や水道代の実費しか徴収しておらず(乙 56ないし乙 98)、使用料(賃借料)を徴収していないという違法(白子町使用料条例違反)が認められるので(乙 14、乙 15)、やはり本件請求が認容されるべきである。
(3)怠る事実であること
被告は、「仮に違法である」としても「財務会計行為の違法」となり「怠る事実」ではないから、監査請求期間の制限を理由として、本件請求が却下されるべきである、と主張している。
しかしながら、上記の許可書が存在しない14年については、違法な行政財産の使用が認められ、これは財産の管理を怠る事実である。また、上記の許可書が存在する 6年については、使用料を徴収していないのであるから、公金の徴収を怠る事実が認められる。
3 白子町庁舎と体育館について
(1)行政財産の無許可使用の違法については争いがないこと
被告の主張によれば、白子町庁舎及び体育館の賃貸借契約は昭和 55年 12月 26日に締結された(以下まとめて「本件賃貸借契約」という)。この締結当時の地方自治法によれば、行政財産である白子町庁舎及び体育館を行政財産の使用許可がないままに使用することは、本件賃貸借契約を結んでいたとしても、違法である。これは被告も認めている。
(2)行政行為の瑕疵の治癒、違法行為の転換との主張について
被告の主張を前提としても、本件賃貸借契約は昭和 55年 12月 26日に 1回締結されただけである(乙 30、乙 31)。当然ながら、本件賃貸借契約は同契約時(昭和 55年当時)に設置された自販機に適用されるものである。
これに対し、本件請求は、平成 14年以降に設置された自販機についての請求であるところ、平成 14年以降に設置された自販機は、本件賃貸借契約時(昭和 55年当時)に設置された自販機とは、幅・奥行・設置面積及び(設置面積や電気料金や水道料金等を基に算定される)使用料等が異なるはずである。
とすれば、本件請求にかかる平成 14年以降に設置された自販機には本件賃貸借契約は適用されない。なぜなら、何を(どこを)いくらで貸すかという賃貸借契約の要素が異なるからである。また、体育館については、公民館とは異なるから、公民館を対象とする本件賃貸借契約(乙 31)はそもそも適用されない。
したがって、本件請求にかかる平成 14年以降に設置された自販機については賃貸借契約が存在しない。
そして、仮に、行政行為の瑕疵の治癒または違法行為の転換との理屈により行政財産の無許可使用が合法化されることがあるのだとしても、それは本件賃貸借契約が適用される場合に限られるはずである。ところが、そもそも平成 14年以降に設置された自販機については、本件賃貸借契約が適用されず、瑕疵が治癒されるのだという、または違法が転換されるのだという、その対象になる賃貸借契約が存在しない。端的に言えば、本件請求にかかる平成 14年以降に設置された自販機については、無契約なのであるから、その違法性を除外する理屈は存在しない。
(3)賃料を徴収しなかったことについて
被告は、「このような状況下、市川俊雄町長は、本件各賃貸借契約の賃料の免除をした。」と主張しているが、その免除をしたという証拠はない。また、この免除が地方自治法に合致するとの被告の主張は、本件と法的関連性のない橋の建設等を理由とするものであり、荒唐無稽というほかない。仮にそのような理由で本件賃貸借契約の賃料を免除したのだとすれば、明らかに行政の裁量権を逸脱濫用するものとして違法である。
4 林和雄の責任(過失)について
(1)住民監査請求における陳述
住民監査請求において「関係人」であった林前町長の陳述からすると、① 林前町長が議員として本件自販機の設置について「いろいろと報告を受けて」知っていたこと、② 小髙郡次が無償で本件残置を白子町に貸す「代わりに」本件自販機を無償で置くことになったが、そのことが何ら問題にならなかったことを林前町長が知っていたこと、③ 自販機の設置について、業者からは「お金を取ってやっている」が、そういうものとは区別して「役場あるいは体育館」ではお金(使用料)を取っていないと知っていたこと、④ 鈴木正美議員の一般質問をきっかけに行政財産の無許可使用や使用料の不徴収につき「行政財産のあれはない」として、林前町長が説明を求め、その理由を参加人小髙が林前町長に対し説明をしたことがわかる。
したがって、本件における行政財産の無許可使用や使用料の不徴収の事実について、林前町長が認識していたか、認識し得たことは明らかである。
(2)白子町総務課の報告書
白子町総務課の報告書(乙 32)によれば、「そもそも庁舎内の自動販売機については、無償設置であることは多くの職員が知っている事実であり、その理由も、父親の代からの引き継ぎであると認識していた。先輩職員から正規の手続きをするように促されたこともあったようだが、『昔、役場と親父が話し合いで決めたことだから』と言っていたようである。」( 3枚目)とのことであり、このような多くの職員が知っている事実を昭和 55年当時から町議を務め 28年にもわたり町長を務めた林前町長が知らないはずがない。
(3)歴代総務課長への聞き取り結果
歴代総務課長への聞き取り結果(乙 33)のうち「吉井清」によれば、「自販機設置の当初に当時の諸岡助役に『無償貸付はまずいのではないか?』と提言をするも『少し待っていろ俺がなんとかする』といった趣旨の発言があったことは記憶にある。」( 1枚目)とのことであり、このような総務課長や助役レベルで懸案として語られている事実を昭和 55年当時から町議を務め 28年にもわたり町長を務めた林前町長が知らないはずがない。
(4)小括
したがって、本件における行政財産の無許可使用や使用料の不徴収の事実について、林前町長が認識していたか、認識し得たことは明らかであって、こうした違法行為を放置していた林前町長の過失は明らかである。
5 不当利得の損失、不法行為の損害について
本件訴訟で問題にしているのは、白子町と小髙郡次及び小髙健史との間の不当利得、白子町と林前町長との間の損害賠償であるから、前者においては白子町の損失により小髙郡次及び小髙健史が利得したかどうか、後者においては白子町の損害が林前町長の過失行為に基づくかどうかを審理すれば足りる。
それ以外に、仮に「本件残地」の無償使用を許したことによって小髙郡次が損失し訴外石井が利得したのだとしても、また、仮に訴外石井が「海風館」の建物を取壊し自宅の建物を移動したことによって損失し白子町が利得したのだとしても、そうした関係については本件訴訟においては問題にしていない。白子町に関係する全ての者について考慮しなければ不当利得や損害賠償が成立しないということにはならない。
6 参加人小髙が悪意の受益者であること
参加人小髙は、白子町の管財事務を長年担当していた(管財事務を所管する管理職でもあった)こと、青少年センターの自販機については使用料名目の金員を白子町に支払っていたこと、住民監査請求での陳述内容からすると、悪意の受益者である。
以 上
<参考>
●上記資料( 弁論要旨 )の読み上げ音声は、下記 WEBよりダウンロードできます。再生:10分 59秒
https://drive.google.com/file/d/1hdmZLJNpfw9cQPXDW4_7lETEEghZ9lrZ/view?usp=sharing
●上記資料( 弁論要旨 )は、下記 WEBよりダウンロードできます。
https://drive.google.com/file/d/1fVbGLrXy8ZSzkimvyogJxaqOhk0jUbPu/view?usp=sharing
【今後の動き】
次回第 4回 弁論は令和 5年 3月 24日(金)千葉地方裁判所( 第601号法廷 )10:00開廷予定となっています。
以上です。