令和4年6月17日、白子町監査委員より先日行った住民監査請求の監査結果が発表されました。
白子町監査委員による監査結果についてその所感等を述べます。
異例の合議不調
~職責を果たした地引久貴監査委員~
監査結果は監査委員の意見が合わず合議不調となったものの、公認会計士でもある地引久貴監査委員の意見では、本件監査請求には理由があり、前町長への損害賠償請求権を肯定したものの、損害額の算定が限られた監査期間内では判断ができないといった結論であった。
たしかに、地引委員の言うように損害賠償請求額の算定は容易ではなく、それにあたり前町長である相手方の利害にも直接かつ重大な影響を及ぼすことから監査期間内に結論を出せないというのには一定の合理性がある。
一部事実認定に誤認はあるものの、町監査委員として職責は果たされたのだと思う。
職責より政局を優先した今関勝巳監査委員
法令でなく、白子町議会会派みらいに迎合
白子町議会会派みらいの一員である今関勝巳監査委員。先日会派から出された会報には「会派みらいとしての考察」なる記事が掲載された。自らが監査委員として関与している本件自販機無償設置問題の適法性について、当会や前町長、A氏ら関係人の意見陳述前にもかかわらず前町長や職員らの責任を不問とし、「違法性はない」といった「判断」を行い公表した。
通常、自身が監査委員として関与する審議中の事件について、その内容に触れることは、住民監査請求における審議の公正性に疑いを生じさせることから審議以外の場において事件について言及することは監査委員の常識としてありえない。
自らの構成員が事件の監査委員であることを理解せず、また今関勝巳町議会議員も自身が関与する事件についてこのような記事の掲載に疑問を持たない会派みらいのガバナンスがどうなっているのか甚だ疑問である。
そして本件監査において、この「会派みらいとしての考察」に完全に迎合した監査結果を出した今関勝巳監査委員。
前述のとおり結論ありきの監査によって、今関監査委員の意見は法令に適合しない恣意的な監査結果となってしまった。
事実認定も、法令解釈も支離滅裂で、客観的な判断力を失っていることはその監査結果における今関監査委員の意見を見ればわかるであろう。自身には準司法的機関を担う監査委員たる矜持はないのだろうか。
白子町議会会派みらい会報より引用
間違いだらけの監査結果
~監査結果資料を検証~
監査対象事項の法令解釈誤りについて
監査結果では「住民監査請求においては対象とする財務会計上の行為又は怠る事実を他の事項から区別し,特定して認識できるよう個別的,具体的に摘示しなければならないとされているが,請求人からは(1)本件請求における具体的事実の指摘で,自動販売機の無償貸し付けの事実を確認するのみで,監査の対象となる具体的な使用料等の摘示及び具体的な期間の摘示や具体的な損害の摘示がなかった。」と指摘する。
しかし、平成10年7月3日の最高裁判決によると「住民は、監査請求をする際、①監査の対象である財務会計上の行為又は怠る事実を特定して、②必要な措置を講ずべきことを請求すれば足り、措置の内容及び相手方を具体的に明示することは必須ではな」いとしており、本件請求は①自販機の無償設置の事実、②A氏への不当利得返還、および前町長への不法行為に基づく損害賠償請求するよう求めており、①、②要件ともに充足している。
おそらく、監査委員はこの判例を調べずして上記の指摘をしているのだと思われるが、不勉強というほかない。
監査の期間に誤り
監査結果は令和4年6月17日に公表されたところ、監査の期間が6月19日までと未来の日付になってしまっており、監査期間の終期が誤っている。
これでは真正な監査期間を特定できず、そもそも適正に監査が行われているかということに疑問を持たざるを得ない。
青少年センターの使用料を監査対象から除外すべきでなかった
監査結果では「白子町青少年センターに設置された自動販売機1基については,適正な手続きが取られていたので,本件監査の対象となる行政財産から除く。」としているが、監査対象とすべき理由は意見陳述においても指摘をしている。
たしかに、一見すると白子町青少年センターへの自販機無償設置は、自販機の設置にあたり「契約書」ではなく「協定書」と称する法的性質が曖昧な書面により「使用料らしきもの」を支払っているようにも思える。
しかし、使用料とは、白子町使用料条例により①使用料と②必要経費から構成されるところ、その「協定書」に記載されている使用料らしき金額の算定根拠をみると、自販機の設置料ではなくその維持にかかる「電気及び水道料金」である。つまり「協定書」によって支払われていたのは②の必要経費のみであって本来支払うべき①の使用料は支払われていなかった。
よって本来徴収すべきであった使用料が支払われていないのであるから、監査対象から除外したのは誤りであり、監査すべき事項だったのである。
町役場職員A氏に対する請求に「理由がない」ことに理由がない
監査結果では「A氏は白子町役場職員であるが,法第242条に定める請求の対象にはならず,また,A氏の行為は財務会計上の行為としての財産管理行為に当たらないので,本件請求には理由がない。」とする。
しかし、本件請求はA氏が役場職員であるから監査対象としたのではなく、無償設置には法律上の原因がない、いわゆる不当利得であるから町はA氏に不当利得の返還請求せよという趣旨である。
住民監査請求書の1ページ目に職員A氏には不当利得に基づく返還を求めており、監査委員らはその請求原因を理解していないか読み違えている。
よって「本件請求には理由がない。」とする監査結果には理由がなく、不当利得に基づく返還請求権が存するのであるから監査対象とすべきであった。
監査委員の意見が匿名
合議不調となる住民監査請求は、インターネット上でも散見されるが(愛知県名古屋市、三重県四日市市)、監査委員名を匿名処理している例は見つけられない。
監査委員がその職務を行うにあたり、その意見を匿名とする理由はなく、また監査の公正性や、職務執行における各監査委員の適任性を住民らが判断するためには、その意見の責任の所在を明らかにする必要があり、監査結果における意見にはその氏名を明記することが適当であろう。
結論ありきで論理が破綻している今関勝巳監査委員
今関監査委員は自販機の無償設置について、「行政財産である白子町役場庁舎と白子町国民体育館の目的外使用を施設管理者の見地から許可する者としての行為であるので,白子町役場庁舎と白子町国民体育館の財産的価値に着目し,その価値の維持,保全を図る財務的処理を直接の目的とする財務会計上の行為としての財産管理行為には当たらないと解するのが適当である。」とする。
おそらく読者も今関監査委員が何を言っているのかわからないと思うが、今関監査委員の意見の中で最も支離滅裂な点がここである。
引用する最高裁判決(平2・4・12)は、住民訴訟の対象となる財産管理行為を、「当該財産の財産的価値に着目し、その価値の維持、保全を図る財務的処理を直接の目的とする財務会計上の行為」と定義づけ、判決では請求が却下され住民側が敗訴している。
しかし、この判決で問題となった事案と本件はその性質を異にしており、今関委員の指摘は全く当たらない。というより理由も何もなく説明になっていない。
それにもかかわらず、今関監査委員は町が管理する施設に物を無償設置する行為が財務会計上の行為ではないと位置付けたのである。
仮にこの理屈がまかり通るのであれば、町が使用料条例によって使用料を徴収するおよそすべてが住民監査請求ないし住民訴訟の対象外ということとなる。
大阪市の住民監査請求Q&A(#6)や千葉市の住民監査請求Q&A(p.4)には「公金の賦課・徴収を怠る事実の例の代表として、「条例により使用料を納めるべき者に対し故意に使用料を賦課しないこと」を例示している。つまり、白子町使用料条例に基づく使用料を徴収しないことは「怠る事実」そのものであり、これを財務会計上の行為としないことはあり得ないのである。
町長の裁量権は無制限ではないこと
今関監査委員は無償設置について「橋梁整備事業」等から「総合的に勘案」して町長の裁量権として判断したといっている。
しかし監査請求時に指摘していたように庁舎管理権とは、「公物管理者たる庁舎の管理者が、直接、国又は地方公共団体等の事務又は事業の用に供するための施設としての本来的機能を発揮するためにする一切の作用」と解され(原龍之助『公物管理法』(新版再版)235頁)」、橋梁事業と町役場庁舎の施設としての本来的機能の発揮とは何ら関係がないことから、橋梁事業の実施が庁舎管理権の範囲外にあることは明白である。
このように庁舎管理権を逸脱していることを指摘しているにもかかわらず、何らそのことに対する反論がないのは反論できる要素がないからとしか考えられない。
つまりここで指摘するまでもないが、町長の裁量権は無制限に認められるものでなく、一定の制約のもとに存するのである。
仮に裁量権の範囲内であるとしても使用料を免じた証拠もない。
今関監査委員は無償設置について、「総合的に勘案して,町長の裁量権として判断した結果であり,その使用料の徴収は白子町使用料条例第7条第4項の規定により,町長が必要と認めたので,使用料及び第5条に規定する加算金の全部を減免したものである。」とする。
しかし証拠によればその当時の使用料に関する減免申請書や減免許可書類、その決裁文書も何も残っておらず、「減免したものである」とするのは今関監査委員の「想像」でしかない。
監査委員は、住民監査請求にあっては準司法的機関として中立な立場で審査すべきところ、「会派みらいとしての考察」の影響か、証拠ではなく偏った今関監査委員の「想像」により監査を行うといった事態に陥ってしまっている。
前町長の責任は故意または重過失に限定されていない
今関監査委員は無償設置について、「前々町長と前町長は行政の継続性をもってこれを承継してきたのであって,故意または重大な過失があったとは認められないので違法性はない。」とする。
しかし、地方公共団体とその長の関係は委任関係にあり、長は善管注意義務(民法第644条)を負うとされている(最判平成25年3月22日)。
つまり、仮に前々町長により違法な契約がなされ、違法性を承継したとしても前町長にはその是正を図り適法な状態にする義務を負っている。この違法性の継続が数年であれば自己の責任とはいえないのかもしれないが、28年の長きにわたりそれを放置し続けたことは明らかに善管注意義務に違反する。
そして、善管注意義務の責任は「故意または重過失」に限定されず、「軽過失」をも含むのである。
念のため指摘しておくと、地方自治法第243条の2による免責条例があれば善意または無重過失時にその責任を一部免責できる場合もあるが、白子町にその条例はない。
したがって、今関監査委員のいう故意または重過失がなかったから違法性はないとの指摘には法律上の根拠がないのである。
合議制規定は地方自治法第242条第8項ではなく第11項
監査結果の結びに監査の合議制規定として地方自治法第242条第8項が挙げられているが、合議制規定は11項である。
改正前の地方自治法が引用されているものと思われるが、どこかの監査結果から複写してきたものなのであろうか。これもまた監査が適切に実施されていたのか疑問を持たざるを得ない。
住民訴訟提起へ
以上のように、この監査結果には重大な事実誤認や法令解釈の誤りが複数認められ、当会としてこの監査結果は全く納得のいくものではありません。
監査結果を受け、現在本会では現在住民訴訟提起に向けた準備を行っており、また近日中に結果をご報告したいと思います。











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